2012年01月22日

歯周病について(前篇)

先日、歯科セミナーを受講してきました。

歯周病は、犬や猫において口腔歯科の中で最も多い疾患(3歳以上の犬や猫の約80%)ですが、口腔疾患の中というより、すべての疾患の中で最も多い疾患ともいわれています。
歯周病は、歯垢中の歯周病原関連細菌に対して宿主の炎症性反応の結果、引き起こされます。
歯肉のみ侵された歯肉炎は治療によって改善されますが、歯周組織まで侵された歯周炎では完全に回復させることは難しいものになります。
犬や猫においては、歯周病の罹患率が高い理由として、食餌内容(歯に付着しやすい食事の影響)やストレスとの関連、あるいは寿命が延びたことなどが考えられています。
また、歯が摩耗しやすい食餌や咀嚼行動は、歯垢・歯石の付着率を低くさせるため歯周病になりにくいと考えられています。    
一般的に、高齢になるにしたがって多くの犬・猫で歯周病の発生率は高くなりますし、小型種は大型種より顎の大きさに比較して歯の大きさが相対的に大きいため、歯と歯の隙間(歯隙)が狭くなり歯垢が付着しやすいため小型犬は大型犬より本症の発生率は高くなります。
とくに歯垢・歯石が付着しやすい部位は唾液腺開口部近くの上顎臼歯の頬側面(外側面)ですので、歯磨きの際は上顎臼歯を重点的に磨きましょう。


歯周病の発生機序と歯周病治療の考え方

歯周病は、歯垢・歯石除去を実施した犬や猫においても唾液由来の糖蛋白が歯面に付着し、ペリクル(獲得被膜)が形成されることから直ちに始まります。そして、歯垢の付着はこのペリクルの上にグラム陽性球菌が付着することから引き起こされます。
歯垢が歯面に付着してから6〜8時間後に歯肉に炎症を生じ、歯垢から付着から3日〜5日後に歯石に変化します(人では、口腔内が弱酸性のため1カ月以上かかかる歯石形成も犬の口腔内はpH8〜9でアルカリ性のために短時間で歯石形成されてしまう)。
歯垢は、細菌由来の多糖類、細菌、食物残渣、白血球、マクロファージ、細胞の残骸、脂質、唾液由来の蛋白質などから成る。歯垢1g当たり約1000〜2500億個の微生物を含んでいるといわれています。
これらの歯垢細菌が歯肉辺縁に常に接すると歯肉に炎症反応を引き起こすようになり、外見的に歯肉は腫脹し、最初、歯肉ポケット(仮性ポケット)が形成されます(この病態を歯肉炎という)。
この状態を放置すると、歯面の歯垢・歯石はさらに蓄積し、炎症は進行して歯周組織にも炎症を引き起こすようになります(これを辺縁性歯周炎と呼ぶ)。
歯石中の細菌はすでに死滅しているので直接炎症の原因にはなりませんが、その表面が粗造であるため、その上にさらに歯垢が付着し歯肉炎を悪化させます。
動物では、胎子のときには無菌状態であり出産時に母体の産道で細菌に感染し、その後、有菌状態となります。口腔内では、歯面ばかりでなく、舌、歯肉溝、唾液などで常在細菌叢が形成されている。
人においては、歯肉炎を引き起こす細菌として、すべての歯垢中の細菌が関与していることが判明しています。
歯垢中の細菌は、生体側からの感染防御機能や抗生剤から身を守るため、バイオフィルムを形成します。このバイオフィルムの存在により抗生剤が効きづらくなるため、機械的なバイオフィルムの除去が必要になります。具体的には、鎮静・麻酔下でスケーラーなどを用いて歯垢・歯石除去をおこないます。


歯周病が進行して行きつく先は?

通常、歯が脱落すると歯周病は消退しますが、その状態にいたるまでに下記の症状を示すことがあります。
歯周炎が進行すると、根尖周囲病巣を引き起こし、さらに、炎症が進行して皮膚に瘻管を作り外歯瘻となったり、口腔粘膜に瘻管を形成すると内歯瘻に至ることがあります。
歯周病により、上顎骨が破壊されると口鼻瘻管にいたることも少なくありません。
くしゃみ、鼻汁、鼻の上をよくなめるしぐさをするなどの症状は口鼻瘻管が原因であることが比較的多く、小型犬では、歯周病による下顎第1後臼歯部や犬歯などの歯槽骨の垂直骨吸収が原因で歯周病性下顎骨骨折を認める場合も少なくありません。
さらに、獣医学領域においても人と同様に歯周病の全身疾患への影響が議論されています。細菌、内毒素(LPS)、サイトカインなどの炎症性介在物質が歯肉溝から全身循環に入り、全身性に影響を与えることが示唆されており、とくに歯周病に罹患した犬で心臓、肝臓、および腎臓において炎症性細胞浸潤を認めた複数の報告があります。

後篇に続く
posted by rose-ah at 17:07| Comment(0) | 病気のアレコレ豆知識