2012年04月11日

慢性腎臓病の食事管理について


お腹の中にはそら豆のような形をした臓器が2つ左右にあります。
それが腎臓です。
今回、腎臓についてのセミナーがありましたのでお伝えしたいと思います。

1.腎臓は何をしているの?
腎臓の主な仕事は尿を作ること
血液をろ過して体に要らない老廃物を捨てる働き(ろ過機能)をしています。
体重10kgの犬の場合1日に53.3Lもの血液をろ過しています。
ろ過したものがすべて尿になってしまうとオシッコは大変な量になってしまいます。
そこで腎臓ではろ過した水分を再吸収する濃縮機能も持ち合わせています。
腎臓の尿細管では1日に53.1L の水分を再吸収し、200-250mlまで濃縮してオシッコとして排泄します。
その他の働きとしては、赤血球をつくらせるホルモンの分泌・血圧の調整・ビタミンD の活性化などがあります。

2.慢性腎臓病はどういう病気?
腎臓は1度壊れてしまうと機能が回復しない臓器です。
慢性腎臓病は多くの原因(感染症・炎症・循環不全・中毒など)が関与しながら、ゆっくりと腎機能が低下していく病気です。
犬よりもに多く、15歳以上の猫の約30%が慢性腎臓病と言われています。
腎臓は障害を受けても残った臓器で機能を補おうとするのでなかなか症状が出てきません。
症状が出てくるのは腎臓の機能が残り1/3になった時からです。
この段階になるとまず濃縮機能が低下して、薄いオシッコが大量に出るようになります。
脱水が起こり、のどが渇き飲水量が増加します。
さらに進行し腎機能が1/4まで減ってくると、ろ過機能も低下して嘔吐・食欲不振・沈鬱などの尿毒症症状がでてきます。
この段階になってようやく血液検査で腎臓マーカーに異常が出てきます。

慢性腎臓病は症状が出てきたときには腎臓の障害はかなり進んでいますが、かなり障害されるまで発見が難しい病気なのです。

病気は徐々に進行していき、病気そのものが改善することありません。
しかも、発見時にはかなり腎臓は障害を受けていますので慢性腎臓病の治療は保存療法と対症療法を行います。
先ずは保存療法食事・薬・輸液)で病気の進行を遅らせます。
それでも、いつかは悪化してしまいます。
その時は対症療法輸液・食事・薬)で症状を緩和させる治療を行います。

3.食事は大切なの?
慢性腎臓病の治療において食事はとても重要です。
食事療法の目的は大きく2つ
@残った腎機能を保存すること⇒進行を遅らせる(腎機能残り1/3以下)
A尿毒症症状を軽減すること⇒症状を抑える(腎機能残り1/4以下)

食事管理のポイントは4つ
T.リンの制限
U.EPA・DHAの強化
V.タンパク質の制限
W.十分なカロリー摂取


TとUは@の進行を遅らせるため、VはAの症状を軽減するために重要です。
T.リンは血液中でリン酸カルシウムとなり腎臓の尿細管に沈着し腎機能の低下させるためリンの制限が大切です。
中等度の腎性高窒素血症(IRISステージV)を伴う犬猫にリンを制限した食事を与えることにより生存期間が猫で300日から600日へ、犬で200日から600日まで伸びたという論文もあります。
U.EPA・DHAには血管拡張作用があり、腎臓にある糸球体の血圧を下げ、ろ過量を上昇させます。
それにより尿たんぱくや血中老廃物(クレアチニン)濃度の減少に寄与します。
V.タンパク質の制限は今ではAの尿毒症期の動物に行います。
@の段階の動物では尿からのタンパク排泄が増加しているので、むしろ健康な動物よりタンパク質の要求量が増えているのであえてタンパク質の制限はしません。
Aの段階になると尿からのタンパク排泄は増えていますが、摂取したタンパク質を分解してできる尿素による体への悪影響(尿毒症)のほうが強くなるため食事性タンパク質の摂取を制限します。
W.タンパク質を制限する代わりに脂肪や炭水化物からカロリーを摂取します。
給与時のポイントとしてはシニアになると腸の消化吸収機能が低下しますので、毎日の食事を3~4回に分けて与え消化吸収率を最大にすること。
また、38~39℃に温めて与えると、より嗜好性が高まります。
温めすぎはビタミンが壊れますのでご注意ください。

リンの制限は一般の食事では難しいので、病院食がおすすめです。
残念ながら嗜好性が優れているものではありませんので、症状が出始めの食欲があるうちからの早めの切り替えがおすすめです。

慢性腎臓病の治療には特効薬というものがありません。
いかに早く気づき、進行を遅らせるかが鍵となります。

健康診断といえば血液検査ですが、シニアになったら尿検査もおこなっていきましょう。
腎臓病の早期発見には尿検査が欠かせません。

院長 豊福健
posted by rose-ah at 15:57| Comment(0) | 病気のアレコレ豆知識