2012年03月30日

上部消化器疾患について

先日、消化器の勉強会に参加してきました。

上部消化管には食道・胃と十二指腸が含まれますが、今回は食道に関してお伝えしたいと思います。

犬と猫とでは食道の動きに差があることをご存知でしたか?
口から入った食物は食道の運動(蠕動運動)によって胃へ送り出されますが、猫は犬に比べ、とても食道の動きが悪い動物です。
犬の食道は1秒間に75-100cmの速さで動けるのに対し、猫は同じ時間で1-2cmしか動くことができないといわれています。
そのため、猫はしっかり投薬したつもりでも実はお薬が食道に残ったままになっていたりすることがあります。
代表的な例は薬剤(抗生物質:ドキシサイクリン、テトラサイクリン)による食道炎です。
アルカリ性の強い錠剤が食道に長時間残存することで食道炎が起こります。
この薬剤性食道炎の予防には、お薬を水に溶かして与えるか、錠剤を投与後6ml以上を水を飲ませることが推奨されています。

食道炎といえば、犬も猫も麻酔後の食道炎にも注意が必要です。
麻酔により下部食道括約筋が緩み、胃液が食道内に逆流することで食道炎は起こります。
症状は長時間の麻酔後1週間前後でよだれや吐出がでてくるもので、麻酔直後には症状がでてこないのが特徴です。

また、食道内異物に関するトッピックもありました。
食道内遺物は5kg以下の小型犬(チワワ・ヨーキー・シーズー)で多く、全体の80.6%を占めています。
閉塞部位は食道遠位(胃側)が多い(52.2%)。
合併症は比較的高い割合(8.9%:気胸・食道憩室・食道狭窄症)で発現し、死亡率も4.4%(気胸患者)と決して低くない。
合併症は閉塞後の経過が長いほど起こりやすくなるため、合併症を減らすためには速やかに異物を除去することが大切です。
まずは骨・ジャーキーやリンゴなどを丸呑みされないように注意することが大切です。

他にも食道疾患として有名なのが巨大食道症です。
発生率が高いわけではありませんが、発症すると治療が難しい病気です。
原因は局所型重症筋無力症・副腎皮質機能低下症・甲状腺機能低下症や鉛中毒などがあげられます。
重症筋無力症の場合、薬に対する反応が悪く対症療法が治療の中心になります。
立位での食事・胃からの食物排泄を促す薬や2次的に起こる逆流性食道炎・肺炎の治療を行います。
巨大食道症の最新情報としては、若齢(13か月以下)で発症した場合は誤嚥性肺炎に注意すれば比較的予後がよく(中央生存期間:2,381日)、
6-8歳齢で診断され場合(62日)・誤嚥性肺炎がある場合(16日)・体重が25kg以上の場合(61日)は予後が悪いという論文が出ています。

食道の疾患にもいろいろありますが、誤食は飼い主様がコントロールすることのできるものです。
飲み込んでしまいそうなものはないか、生活環境を毎日チェックしてくださいね。

他にも胃と腸のお話もありましたが、それはまた次回にさせていただきたいと思います。

院長 豊福健
posted by rose-ah at 10:09| Comment(0) | 病気のアレコレ豆知識
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