2012年10月22日

周術期の疼痛管理

手術期疼痛管理 (480x640).jpg
先日、麻酔セミナーに参加してきました。
周術期の疼痛管理とは言い換えると、手術によって生じる痛みを手術の前後でお薬を使って和らげる治療を行うということです。
手術による痛みは術後24時間が一番強く、3日間は続くと言われています。
不妊手術などでお腹を開くと鎮痛剤を使っていても当日はお腹を庇う仕草がみられます。
翌朝になると割とケロッとしていますが、友人が盲腸の手術をしたときは1週間は痛かったと言っていましたので、動物も表に出さないだけで痛みを感じながら生活していると思います。

手術による痛みは病気の回復にも影響してきますので、痛みをなくすことは効率の良い治療をする上でとても重要なポイントになります。

手術前にすでに痛みがあってもなくても手術前から鎮痛剤を投与することは大切です。
それは鎮痛剤や鎮静剤を複数使用することにより患者が落ち着いていれば、手術中の吸入麻酔の量を減らすことができ、より安全に手術を行うことができるようになるからです。
また、手術のよる痛みの刺激が神経に記憶される前に鎮痛剤を投与することで術後の痛みを和らげることができると考えられています。

他に、鎮痛剤は複数使用することでより鎮痛効果を高めることができます。
これは違う作用機序の薬を使用することで複数のポイント(末梢神経や中枢神経)で痛みを抑えることができること、また作用時間がそれぞれ違うため鎮痛効果の切れ目を補完しあうことができるためです。

今回の講義を生かして、できる限り痛みの少ない周術期の管理をしていきたいと思います。
posted by rose-ah at 17:51| Comment(0) | 病気のアレコレ豆知識

2012年09月26日

猫のフィラリア症

フィラリア (640x480).jpg

数年前から話題になっていいる猫のフィラリア症のセミナーに行ってきました。

6か月以上の猫のフィラリア感染率(抗体陽性率)は新潟で14%という報告があります。
感染徴候がない猫の11.5%、感染徴候がある猫の21.2%は抗体陽性でした。
つまり、呼吸困難や咳の症状がなくても10頭に1頭はフィラリア症に感染していて今後症状が出る可能性があり、
すでに症状が出ている猫の5頭に1頭はフィラリアに関連する呼吸器疾患(HARD)を起こす(起きている)可能性があることを意味しています。
また、この抗体検査は偽陰性(感染したことがあるのに陽性反応がでない)が多く、
アメリカのデータを参考にすると実際は2倍の30%ほどが感染しているのではないかと考えられます。


猫のフィラリア症は犬糸所虫(フィラリア)が感染することにより起こる病気ですが、
好適宿主の犬と違い非好適宿主の猫の体内ではフィラリアの成長速度は遅く、
多くの未成熟虫が猫の免疫作用を受けて死滅します。
成虫の寄生数も少なく、寿命も短く、ミクロフィラリア(子虫)も産出できません。

犬のフィラリア症は循環器(心臓)にトラブルを生じますが、猫では呼吸器(肺)が障害されます。

猫のフィラリア症はT〜V病期の3段階に分類されます。
第T病期は未成熟虫の死滅による肺の重度の炎症(HARD
第U病期は成虫の死滅による重度の炎症や血栓塞栓=急性肺障害、突然死
第V病期は第U病期を修復するときに生じるU型肺胞細胞の過形成による慢性炎症=慢性呼吸器疾患

フィラリアの幼虫が蚊の吸血時に猫に感染すると皮下組織などで成長して未成熟虫になります。
この未成熟虫は血管に入り肺動脈に到達します。
ここで猫の免疫によって未成熟虫の大部分が死滅するのですが、
この時の免疫応答により肺動脈、気管支、肺に急性炎症による障害が発生します(第T病期)。
その後、生き残った未成熟虫は成虫になります。
フィラリア成虫は猫の免疫応答を抑制し、気管支肺炎の症状が消失することがあります。
もちろん気管支肺炎の症状が続く猫もいます。
その後、寿命で死滅した成虫は肺動脈に詰まり重度の炎症や血栓による肺血管塞栓を起こします(第U病期)。
また、成虫の死滅により猫の免疫抑制機構が消失し、炎症が起こりやすくなります。
その結果、突然の呼吸困難や突然死(10~20%)が起こります。

第T~U病期の間には犬と同様、フィラリア成虫感染によって心不全(胸水・肺水腫)になる猫も現れます。

第U病期を乗り越えた猫は肺の損傷を修復するためにT型(酸素の交換を行う細胞)がU型(肺胞の形を保つ物質を分泌する細胞)の肺胞細胞に置き換えられ、慢性炎症を起こします(第V病期)。
いわゆる慢性呼吸器疾患に移行し呼吸困難に陥ります。

治療はステロイドと気管支拡張剤などの対症療法を行いますが、
一度障害を受けた肺を改善させるのは難しく、お薬の減量で症状が再発し、
治療が長期間必要となる場合があります。

猫のフィラリア症の症状は呼吸困難・咳・嘔吐ですが、
アレルギーや喘息と似ていて症状からでは区別ができません。

診断も困難で検査キットでは感染していても陽性反応がでないことがあります。
心臓超音波検査では成虫がいる時期しか判断できません。

また、肺の障害が重篤になると治療は対症療法しかなくなってしまいます。

こういう理由から、猫のフィラリア症は予防がとても大切な病気の1つなのです。

幸いにも日本にも猫のフィラリア症に対して認可された安全な薬があります。
予防期間は犬と同じ5月から12月までで、
皮膚にたらすスポットタイプであればノミの予防も一緒にできるので実用的です。

お薬で安全に確実に予防できる病気です。
しっかり予防していきましょう!

院長 豊福健





posted by rose-ah at 18:48| Comment(0) | 病気のアレコレ豆知識

2012年06月19日

関節疾患について

加齢とともに増加する病気の1つに関節疾患があります。

1歳以上の犬の20%は変形性関節症であると言われています。
変形性関節症とは、年齢と共に関節の軟骨がすり減ったり、なくなったりすることで骨が露わになったり関節の形が変わったりする病気です。
そのために、関節がこわばったり、腫れたり、熱を持ったりして動かしづらくなります。
このような関節は動かすと激しい「痛み」を伴うことがあります。
変形性関節症は進行性の病気です。

犬の関節炎は8歳以上での発生が多く、約80%を占めています。
関節炎は小型犬(<7.5s:27%)、中型犬(<20s:28%)と比べ大型犬(>20kg:45%)で多い疾患です。
猫では7歳以上の34%、12歳以上の90%は骨・関節炎を患っているという報告があります。

関節炎の悪化因子は年齢、体格、肥満、外傷、高活動量(成長期)、遺伝的要因などがあります。

変形性関節症の症状は、
@歩き方がおかしい
A関節部分を繰り返しなめる
B運動前後の動きがぎこちない
C食欲が低下する
D性格が変わる(触ろうとすると唸る)
などがあり、炎症による痛みに起因しています。

変形性関節症の関節内ではクッションの役割をする関節軟骨が減少し、
骨同士がぶつかりあうことで炎症を起こし痛みを生じます。
ですので、変形性関節症の治療は
@炎症(痛み)の軽減
A患肢の機能回復
B関節軟骨の再生
が重要となります。

関節炎の治療は消炎剤、適度な運動・リハビリ、食事療法などを合わせて行います。

炎症(痛み)軽減のためには消炎剤の投与を行います。
また、痛みが緩和することで活発になり、逆に関節に負担をかけ状態を悪化させる場合がありますので、
状態に合わせた運動プログラムが必要です。
痛みのため使用しなくなった患肢の機能回復のためにリハビリが必要になることもあります。
食事による関節炎の管理として大切なのは、
炎症(痛み)を軽減する成分(抗酸化物質:ビタミンE・C、脂肪酸:EPA・DHA)や
関節軟骨の再生を促す成分(軟骨基質成分:グルコサミン・コンドロイチン、
軟骨再生に働く酵素に必要なミネラル:亜鉛・銅)の摂取することです。
これらの成分は関節サプリメントで補ってもよいでしょう。

その前に、これらの治療と合わせて重要なのが体重管理です。
肥満の場合は積極的な減量が必要です。
なぜなら、肥満と関節障害の間には悪循環のループがあるからです。
肥満であることは関節の障害(自然発生率の1.7倍)を引き起こし、活動量の減少につながります。
動かないということはエネルギー消費量が減少し、肥満につながります。
この悪循環ループにより、さらに症状が悪化します。
肥満の場合は綿密な減量計画を立てて、安全なダイエットをしましょう。

最後に、動物病院では、多くの犬が緊張や興奮からいつもとは違う行動をとることがよくあります。
たとえ肘や膝に痛みがあったとしても緊張したり興奮したりしていては、その「痛み」を見つけることが難しくなります。
四肢の障害は、ある程度長い距離を歩いたり早足で歩いたりすると見つかることもあります。
そのほかにも、階段の上り下りや座ったり寝たりするとき、あるいは、立ち上がるときの動作で異常が見つかることもあります。

これらの異常は病院よりも家庭で見つかることが多いので、普段から態度や行動を注意して見てください。
少しでも普段と違った様子が見られたら、すぐに動物病院に相談してください。
愛犬・愛猫を「痛み」から少しでも早く解放してあげるために。

院長 豊福健

posted by rose-ah at 18:09| Comment(0) | 病気のアレコレ豆知識