2012年03月06日

腫瘍について

2011の資料を整理をしていると、腫瘍に関する統計が出てきましたのでUPします。

現在、犬の死亡原因の第1位は腫瘍になっています。
A大学附属動物病院に来院した患者の統計を見てみると、腫瘍の患者の年齢は平均9.2歳
8歳以上では附属病院受診の40%が腫瘍理由に来院されています。
ペットの寿命が延び、人と同様、腫瘍疾患は避けては通れない病気になってきました。

発生部位、性別、犬種差については、
腫瘍の発生部位において皮膚腫瘍の次に乳腺腫瘍が多いため、
腫瘍全体では雌に多く(雄1:雌1.45) 、
乳腺・生殖器を除く部位では雄に多い(雄1:雌0.89)傾向にあるようです。

腫瘍発生の相対危険度が高い犬種は、
G・レトリバー(1.53)>シェルティー(1.43)>マルチーズ(1.18)>シーズー(1.14)
逆に低い犬種は
ダックス(0.41)<チワワ(0.46)<パピヨン(0.57)<W・コーギー(0.62)<ポメラニアン(0.63)<L・レトリバー(0.70)
となっています。

発生部位別で相対危険度が高い犬種は、
皮膚腫瘍はアフガンハンド、エアデールテリア、甲斐犬、G・レトリバー、シェルティー
皮膚肥満細胞腫は北海道犬、パグ、紀州犬、G・レトリバー、L・レトリバー、柴犬
乳腺腫瘍はマルチーズ、プードル、ヨーキー、シーズー
泌尿器(腎臓・膀胱・尿道)はスコッチテリア、シェルティー
雌の生殖器(卵巣・子宮・膣)はシェルティー
雄の生殖器(精巣)はケアンテリア、S・ハスキー、シェルティー
骨と関節はG・ピレニーズ、ボルゾイ、セントバーナード、グレートデン、アイリッシュセッター、ドーベルマン
があげられます。
*2次診療施設に来院した犬における統計ですので実際とは多少違う場合があります。

腫瘍は治せるものと治せないものがありますが、早期に発見すればそれだけできることも多くなります。
そこで、飼い主様にできるガンのチェックのポイントをお伝えしたいと思います。

1.おでき・治りにくい傷がないか、リンパ節が腫れてないか、月に2回は体を触ってみる。
2.いつもと違う行動や何らかの異常に気付いたら獣医師に相談する。
3.中高齢に達したら定期検診を受ける。

ガンの発生部位別症状のポイント
体表部:増大するしこり・難治性の潰瘍
眼:流涙・目つきの異常・左右不対称の目のサイズ
鼻:くしゃみ・鼻水・鼻血・顔貌の変化
耳:耳だれ・違和感(頭を振る)・左右不対称の耳介の位置
口:口臭・よだれ・出血・食べにくい
肺:呼吸が荒い・咳・レントゲン撮影時発見
胃:嘔吐・吐血・急激な体重減少
大腸:便に鮮血付着・排便時の違和感(しぶり)
膀胱:頻尿・血尿
骨:歩様異常(ビッコ)・腫れ・痛み

上記の点に注意しながら、愛犬の普段の様子をチェックしてみてください。
何もなければ一安心ですね。

院長 豊福健
posted by rose-ah at 11:11| Comment(2) | 病気のアレコレ豆知識

2012年02月20日

アトピーについて

今回はアトピー性皮膚炎に関する勉強会でした。
犬の皮膚病は来院頻度の多い順から感染症(61%)、精神的要因(24%)、皮膚炎(18%)、内分泌(14%)、先天的要因(アトピーなど)(9%)、免疫介在性疾患(4%)、腫瘍(3%)、その他(18%)となっています。
犬の皮膚炎は2つに大別され、1つは感染による炎症(感染症)、もう1つは感染の関与しない炎症(獣医学用域ではアレルギーとして包括)に分けられます。
犬の皮膚感染症には、膿皮症(49%)、マラセチア皮膚炎(34%)、ニキビダニ症(15%)、皮膚糸状菌症(2%)などがあり、アトピー性皮膚炎の診断する前にまず除外しなければならないのがこれらの感染症です。
感染症の治療を行ってもなかなか治らない、もしくはすぐ再発してしまう場合は体質としてアトピーを持っているかもしれません。

もう1つの皮膚炎・アレルギーとは、生体にとって不利益な反応のことです。
動物には本来体内に入ってきた外来物質を処理する力がありますが、その処理が過剰であった時に、外来物質を排除するどころか、むしろ自分を傷つけてしまいます。こういった不利益な反応を「アレルギー」といいます。
一般臨床の現場では激しい痒みがあること、アレルギーを示唆する病歴があること、アレルゲンの回避により症状が改善することが挙げられます。
T型アレルギーは即時型アレルギーで、10~15分ほどで一気に症状が出るため、アレルギーは一目瞭然です。
いわゆる犬のアレルギーには、アトピー性皮膚炎(59%)、疥癬(27%)、食物アレルギー(9%)、ノミアレルギー(5%)があります。
アトピー性皮膚炎は犬のアレルギーの中で最も多く、病名からもわかるとおり、特定のアレルゲンを語っておらず、特定のアレルゲンだけを関連付けることが困難な病気です。
犬では、「遺伝的素因が関与するアレルギー性炎症性皮膚疾患であり、環境アレルゲンに対するIgEの産生異常」と定義されています。

犬のアトピー性皮膚炎の診断基準には、
@掻痒感
A特徴的皮疹と分布
・皮疹は湿疹病変
 付着物(フケ・脂漏)を特徴としない紅斑から苔癬化に至る病変
・分布
左右対称性(眼周囲、口周囲、耳介、四肢関節部、腋窩鼠径、腹部、趾間)
B慢性・反復性の経過(6カ月以上)

鑑別疾患として脂漏性皮膚炎、食物アレルギー、ノミアレルギー、接触性皮膚炎を除外して(合併することもあり)、コナヒョウダニに対する血清IgE(アラセプトパネルテスト)が上昇している場合はアトピー性皮膚炎を疑います。

他にも3歳以下での発症、ステロイド反応性の痒み、病変より前に掻痒が存在する、耳介辺縁部・背側腰部には病変がないなどの条件に数多く合致した場合にアトピー性皮膚炎と診断します。

アトピー性皮膚炎の治療は薬の使用が中心です。薬の有効率は薬によってさまざまですが(ステロイド(ほぼ100%)、抗ヒスタミン薬(約30%)、免疫抑制剤(約70%)、減感作療法(約70%)、犬インターフェロン療法(約70%))、特にステロイドは有効な薬です。その反面、長期間の使用により副作用の問題が出てきますのでステロイドをいかに減らせるかが治療のポイントです。
複数の治療を組み合わせることでより効果的に治療を行うことができ、また薬用量や副作用を減らすこともできます。
それはアトピーで痒みが起きる場合、そのポテンシャルとなる背景に「体質」があるからです。
背景の体質が原因で症状が常に出るというわけではなく、後天的に負荷が加算され、体質の限界を超えたときに痒みが生じ、その負荷が回避されれば痒みがおさまるといった考え方、つまり「閾値の概念」があります。
アトピー性皮膚炎はステロイドを中心とした治療が一般的ですが、「閾値の概念」を考慮すると皮膚に炎症を起こさせないように皮膚の状態を保つこと、つまり悪化因子を回避すること(ノミ、食物、環境アレルゲンの特定し除去すること。皮膚と被毛の衛生状態を保つこと。)も大切な治療になります。

シャンプーはアレルゲンの除去や脂漏症・感染症の管理に有効です。
部屋やケージの掃除もアレルゲン・ノミの卵の除去に重要です。
外部寄生虫(ノミ・ダニ・疥癬)の予防も掻痒のコントロールには大切です。
皮膚疾患に考えられた食事・低アレルギー食は皮膚のコンディションを良好に保つのに役に立ちます。
アトピー性皮膚炎の治療は投薬だけではなく、生活環境の改善でも症状がよくなることがありますので、できる限り悪化因子を排除していきましょう。

治療のゴールは病気を完治させることではありません。以前より症状を軽くしてあげることができれば、かゆみや赤みが少し残っていたとしても愛犬の痒みの辛さから救うことができています。
それ以上の症状の改善を求めて治療を進めることのよって愛犬の体に負担がかかり、よけいに愛犬を苦しませてしまうこともあるかもしれません。
アトピー性皮膚炎という難しい病気を理解し、上手に付き合っていきましょう。

アトピー性皮膚炎の治療には根気が入りますし、ある程度の費用もかかります。また、治療法も複数あって、それぞれにメリット・デメリットがあります。
治療には獣医師との相談が不可欠です。愛犬の症状と飼い主様の生活にあった治療法を選択することが大事です。どの程度症状を軽くしてあげたいのかなど、治療の目標を一緒に考えて行きましょう。

院長豊福健
posted by rose-ah at 18:41| Comment(0) | 病気のアレコレ豆知識

2012年02月08日

ペットの感染症にご用心 口移しや添い寝は禁物


日本経済新聞2012/2/5付に次のような記事が掲載されました。
動物と一緒に生活する上で、気をつけていただきたいことが書かれていましたので、
ご一読していただければと思います。

 犬や猫を室内で飼う人は多いが、気をつけたいのが感染症のリスクだ。犬や猫にとって正常な菌も人間の体に入ると病気を引き起こすケースもある。過度に恐れることはないが、一緒に楽しく生活するからこそ、寝室には入れず、食べ物の口移しをしないなどを心がけることが大切だ。
 猫好きの中年女性Aさん。なんだか喉がいがらっぽいと悩み、日本大学医学部の荒島康友助教に相談した。調べたら「パスツレラ菌」が検出された。この菌は犬や猫の口腔(こうくう)内に存在する菌で、猫だとほぼ100%、犬では75%が保有している。人が犬や猫にかまれるなどして感染すると、化膿(かのう)などの症状が出る。
寝ている間に感染
 Aさんはなぜ感染したのか。実は寝ている時に、猫がよってきて首もとや顔をなめていた。荒島助教がAさんを追跡調査したところ、50回の検査の中で、この菌が25回検出された。「検出された日はいずれも、前の晩に猫を寝室に入れていた。同じ部屋で寝るのはやめるべきだ」と荒島助教は指摘する。


 猫は脚をなめる習性があるので、猫にひっかかれて感染するケースもある。この「ネコひっかき病」は、ノミが「バルトネラ菌」を媒介する。猫がノミをかみつぶした時に、口腔内にこの菌が侵入。人間をかんだりひっかいたりすることで感染する。猫に症状が出ることはほとんどなく、人間が感染するとリンパ節が大きく腫れる。
 猫の爪を短く切っておくことが大切。爪切りをしっかりしておけば予防につながる。
 ほかにも気を付けたい感染症がある。みずほ台動物病院(埼玉県富士見市)の兼島孝院長は「皮膚糸状菌症」を挙げ、1つの症例を紹介する。小学生の女児がいる家庭が猫を飼い始めた。猫の額に円形の脱毛があったが、ペットショップの店員は「人には感染しない」と伝えた。ところが、しばらくして女児の頭部が赤く腫れ、髪が次々と抜けていった。女児は髪の毛の成分「ケラチン」を食べる皮膚糸状菌に感染していた。
ただ、この女児のようなケースは極めてまれで、普通は免疫力で病気になるのを防いでくれる。過度に心配しなくてもいいが、皮膚糸状菌症を防ぐためにも、「動物を清潔に保つことが大切。ただ、シャンプーをやり過ぎると動物の方に皮膚炎が起きる。回数は獣医師と相談して決めてほしい」(兼島院長)。
 亀を飼っている家庭で気をつけたいのが「サルモネラ症」だ。食中毒を引き起こすサルモネラ菌は、亀の保有率が高く、犬や猫は低い。亀を触った手を子供がなめて感染するケースが考えられ、手洗いをしっかりしなければならない。水槽を台所で洗ってしまい食材を通じて感染するケースもある。
過度の接触は禁物
 多くの動物由来の感染症は、死に至ることはほとんどなく、健康な人であれば自然に治ることも多い。致死率の高い病気に狂犬病があるが、日本ではかかる心配はない
 唯一、致死率の高い病気として覚えておきたいのが「カプノサイトファーガ感染症」。発病するケースはまれだが、敗血症を起こす場合がある。起きてしまうと致死率は3割を超え、2002〜08年の間に5人が死亡した。
 病原菌は、犬や猫の口腔内に存在するので、除菌はほぼ不可能。荒島助教は「よく効く薬があるので、とにかくかまれたら、カプノサイトファーガ感染症を紹介した新聞や雑誌を持ってすぐに病院で診てもらうようにする。この病気を知らない医師もたくさんいるから覚えておいてほしい」と話す。
 動物からの感染症を防ぐためには、ペットをまるで我が子のように扱わないのが最も重要だ。口移しでエサを与えるなどの行き過ぎた接触行為は控えるべきだ。あまりにもかわいがりすぎた結果、病気をうつされて嫌いになってしまっては、元も子もない。
感染症1.jpg感染症2.jpg


ひとくちガイド
《インターネット》
◆動物から人へ、人から動物へ感染する病気について知るには
 Zoonosis協会のホームページ(http://zoonosis.jp/
◆厚生労働省の動物由来感染症に関する冊子をネットで手に入れるには
 動物由来感染症ハンドブック(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/index.html
posted by rose-ah at 11:52| Comment(0) | 病気のアレコレ豆知識