2012年03月13日

心臓病の食事管理

先日、心臓病に対する食事管理のセミナーがありました。

どころで、心臓は何をしているでしょうか?
心臓は全身に酸素と栄養を配給するため、生きている限り動き続け、血液を送るポンプの働きをしています。
心臓がポンプとして働くためには、@心臓の筋肉、A弁、B正しいリズム、C血管がしっかり機能しなければなりません。
@心筋症、A弁膜症、B不整脈、C高血圧などにより、どれか一つでも機能が低下すると、心臓の負担が増えてしまいます。

現在、犬の10-15%、10歳以上の犬の30%は心臓病と言われ、犬の病気の死因の第2位にまでなっています。
また、95%が弁膜症などの後天的に発生する心臓病です(先天性の奇形は少ない)。
心臓病犬の年齢分布は小型犬では8歳以上が47.1%、中型犬では7歳以上が72.1%を占め、シニアに多い疾患といえます。
小・中型犬では僧房弁閉鎖不全症(70%)などの慢性弁膜症が多く、大型犬では拡張型心筋症が多い傾向にあります。
その他、最近は減ってきましたがフィラリア症もまだ多い地域があります。

心臓病になると血圧を維持するため、腎臓からレニンという物質が出てきて血管を収縮させたり、塩分(ナトリウム)を溜めこむことにより循環血液量を増やそうという反応が過剰に起こってきます。
一時的にはよい反応も、それが慢性的に続くと心臓の負担が大きくなってしまいます。
血管が細くなることは、筋肉などに十分血液(酸素・栄養)が行き届かなくなり、疲労感・体重減少・食欲不振につながります。
また、塩分の溜めこみ(循環血液量増加)により、むくみ・腹水・肺水腫になりやすい状態になります。

ほとんどの心臓病は治る病気ではありませんので、心臓病の治療は悪化をさせないようにうまくコントロールすることに重点が置かれ、臨床症状や心不全のステージに応じて治療を行います。
心臓病は進行すると内服薬が中心の治療となり、食事管理だけでコントロールするのは難しいことですが、心臓病からくる疲労や呼吸困難、薬の副作用などにより、食欲不振になり、カロリーが不足してきます。
カロリー不足になると健康な犬では脂肪を分解してエネルギーを産出しますが、心臓病犬は炎症性サイトカインの影響でタンパク質(筋肉)を分解することによりエネルギーの補給を行います。
このエネルギー産出法の違いから、筋肉は減少し病的に痩せてしまうのです。
この状態を心悪液質といいます。
この心悪液質にならないために必要な栄養素を十分に含んだ食事をとることが大切なのです。
心臓病患者の食事管理のポイントは、特定の栄養素から有効な効果を引き出し、@心臓病の進行を抑えるA最適なカロリーの供給B栄養素の過剰または不足を避けるC必要な薬剤の種類を最小限にするDQOL(生活の質)を向上させることです。
心臓病療法食は高い嗜好性、高いエネルギー密度、ステージに合わせたナトリウム制限、良質なたんぱく質・マグネシウム・タウリン・カルニチン・抗酸化物質・アルギニン・EPA/DHAが十分取れるように設計されています。

高い嗜好性、高いエネルギー密度、良質なたんぱく質は食欲不振と体重減少予防に、
療法食を2種類作ることでステージに合わせてナトリウムの制限をしやすくなりました。
マグネシウムは炭水化物・脂肪代謝、蛋白汁・核酸合成、心筋・平滑筋の収縮にかかわっており、補充により不整脈や心収縮性の低下の予防に寄与し、タウリン・カルニチンは拡張型心筋症の治療に好影響をもたらすと考えられているアミノ酸で、心筋の収縮力の改善につながります。
抗酸化物質(ビタミンC・ビタミンE・タウリン、ルテイン)は心臓病において増加するフリーラジカル(活性酸素)に対して有効です。
アルギニンは代謝により一酸化窒素を放出し、この物質には血管拡張作用があり、高血圧の予防に期待されています。
EPA/DHAには心臓病犬の体重減少の一因であるサイトカイン(TNF・IL-1)の生成を抑える働きがあり、心悪液質に対して有効と考えられています。

心臓の療法食への変更時期は「無症状だけれども心臓が大きくなってきたとき」からがおすすめです。
症状がほとんど出ない状態をできるだけ長く維持するため、また心臓が悪くなってからだと食欲も落ちていることが多く、変更しても食べてくれないことが多いため、この時期から開始した方がよいと考えられます。
心臓が悪いとわかった時点で始めていただいても問題はありません。


心臓病は治る病気ではありませんが、うまく付き合っていくことで愛犬と一緒の生活をより長く楽しむことができます。

心臓の治療に関して、ご質問等ございましたら、ご相談ください。

獣医循環器認定医 豊福健
posted by rose-ah at 11:52| Comment(0) | 循環器(心臓病)について

2011年06月14日

獣医循環器認定医

6/12(日)に日本獣医循環器学会に参加してきました。

午前の診療時間の途中から退勤して、
大宮まで行かせていただきました。

皆様にはご迷惑おかけいたしました。

おかげで日本循環器学会総会に出席し、
獣医循環器認定医授与式に無事参加することができました。

獣医循環器認定制度は発足から10年ほどしか経っておらず、
現在50名ほどしか認定医はおりません。
その中の1人になれたことは大変光栄なことで、
重い責任を感じております。

これからも、心臓病と戦っているペットたちと飼い主様のため、
よりよい医療の提供に努めてまいります。

心臓病は治る病気ではありませんが、
うまく付き合っていくことはできます。
愛犬・愛猫たちと少しでも長く一緒に暮らせるよう、
一緒に頑張っていきましょう。

ご不明点・不安なところはお気軽にご相談ください。

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最後に獣医循環器認定医の取得にあたり、
循環器を始めるきっかけをつくっていただいた恩師の上地先生、
循環器を現場で指導していただいた師匠の岩永先生、
循環器を共に学び、いつも刺激を与えてくれた元同僚の水野先生、
循環器を学ぶ場を提供していただいた苅谷動物病院と内田院長、
そして、心臓病の治療をさせていただいた愛犬・愛猫と飼い主様に深謝いたします。
ありがとうございました。

院長 豊福健

posted by rose-ah at 21:20| Comment(5) | 循環器(心臓病)について

2011年05月10日

猫のフィラリア症について

猫フィラリア.jpg

フィラリア症の予防と聞いたら、
犬のことを思い浮かべるかたがほとんどだと思います。

実際、獣医師も近年まで猫のフィラリア症のことを
飼い主様にお伝えすることがほとんどありませんでした。

猫のフィラリア症のことがクロースアップされ始めたのは、
近年になってからです。

最近のデータ(2010年)によると猫の10頭に1頭が
フィラリア幼虫に感染していたことがあるようです。
しかも感染率は地方(11.5%)でも都内(11.0%)でもほぼ一緒。

フィラリアとは、蚊を媒介にして感染する寄生虫です。
猫は免疫の関係で成虫まで成長することはあまりありませんが、
幼虫が原因で肺炎を起こしてしまいます。
仮に成虫まで成長してしまいますと心不全となり、
重篤な症状をを引き起こしてしまいます。

今まで原因がよくわからなかった猫の肺炎は
実はフィラリア症だったのかもしれません。

フィラリア症を発症すると、呼吸困難・咳・嘔吐・食欲不振など
がみられ突然死をまねくこともあります。

有効な検査キットがないので診断するのが難しく、
予防が大切な病気の1つです。

犬のように血液検査が必要なわけではなく、
症状がなければお薬を処方することができます。

月1回、背中に予防薬を垂らすだけ。
しかも、ノミ予防やミミダニ・消化管内寄生虫駆除もできる優れものです。

当院では猫も犬と同様、フィラリア予防
(5月下旬から12月下旬まで、8か月間)をお勧めします。
posted by rose-ah at 06:55| Comment(0) | 循環器(心臓病)について